2008 Fiscal Year Annual Research Report
カント批判哲学における「ミスティシズム」概念の形成をめぐる哲学史的・人間学的研究
Project/Area Number |
19720005
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
山根 雄一郎 Daito Bunka University, 法学部, 准教授 (50338612)
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Keywords | 神秘主義 / 感情 / カント |
Research Abstract |
年度の前半には、前年度に収集した資料の読解を中心に研究を進めた。 具体的には、ミスティシズムとミスティクとの語法上の差異化を、カントはその最晩年に弟子ヤッハマンの著書『カント宗教哲学の吟味』のために書き下ろした短文において試みているように思われるのだが、このことを、前年度に入手した『カント宗教哲学の吟味』の本文の検討を通じて確証した。また、「狂信」を批判するカントの念頭には教会史家モスハイムの著作における近世神秘主義運動の描写があったと考えられるが、それに関する知見を媒介したとも考えられるシュパルディングの著作における「感情」概念に注目し、神学に軸足を置くシュパルディングの議論の帰趨を見届け、それがカントによる批判的な「根源的獲得」論の形成に反作用した可能性を指摘した。以上に関しては、日本カント協会第33回学会 (於九州大学箱崎キャンパス、2008年11月15日) において口頭報告した。 年度の後半には、海外図書館において調査研究を行った。 具体的には、2月後半にドイツ連邦共和国ゲッティンゲン市に所在するニーダーザクセン国立図書館・ゲッティンゲン大学図書館とその周辺、3月後半にオーストリア共和国ヴィーン特別市に所在するオーストリア国立図書館を、それぞれ訪問し、集中的に文献資料の収集と調査を行った。上記の口頭報告は哲学・思想史の観点からするものであったが、そこでの論点のひとつを、教会史の観点からも根拠付け得る文献を確認することができた。
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