2009 Fiscal Year Annual Research Report
カント批判哲学における「ミスティシズム」概念の形成をめぐる哲学史的・人間学的研究
Project/Area Number |
19720005
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
山根 雄一郎 Daito Bunka University, 法学部, 教授 (50338612)
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Keywords | カント / 神秘主義 / 思想史 / 批判哲学 |
Research Abstract |
年度の前半には次の二点に留意して研究を遂行した。 第一に、前年度に収集した資料の読解成果を研究に反映させ、その充実を図るよう努めた。 具体的には、従来、典型的なドイツ啓蒙主義の神学者として紹介されてきたシュパルディングに関する神学思想史の観点からする知見を前年度までの研究に組み入れ、前年度に行った研究報告を補完する形で、三田哲学会の依頼講演「カントと神秘主義をめぐって」(於慶應義塾大学三田キャンパス、2009年10月31日)において、カントの「ミスティシズム」概念の批判的意義を主題として発表することができた。また、論点の幾つかを再構成した独文論文を第11回国際力ント学会に投稿したところ、当該分野の第一線の研究者による査読を経て、2010年1月13日付で受理された。 第二に、カントが批判的見地から「ミスティシズム」概念を育んだケーニヒスベルクというトポスは、やはり神秘主義思想の一類型(ユダヤ教の)とされるハシディズムが興隆しつつあったポーランドを後背地としていたが、ハシディズムとの関わりを問う以前に、そもそもカント哲学におけるポーランド・モーメントを検証する試み自体が、従来、等閑視されてきた。こうした研究状況に鑑み、カントがその教師生活を通じて終始ポーランド情勢に関心を向け続けたこと、この関心が1790年代の社会哲学の展開をも駆動したと解釈し得ることを、カントによる「人間学講義」の筆記録群の分析を通じて明らかにした。本件は、「「もうひとつの革命」への視線」と題して日本カント協会第34回学会(於立正大学大崎校舎、2009年11月21日)にて口頭発表した。 年度末には、ベルリン市及びその周辺の図書館を訪問し所要の資料調査を行った。2010年は神学者モスハイムの在職したヘルムシュテット大学の閉学200周年にあたり、彼に関係する各種資料を入手することができた。
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