2009 Fiscal Year Annual Research Report
マーサ・ヌスバウムのグローバル正義論における自然法の役割に関する研究
Project/Area Number |
19720007
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
神島 裕子 Waseda University, 国際教養学術院, 助手 (60449329)
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Keywords | グローバルな正義 / ヌスバウム / 自然法 / ケイパビリティ・アプローチ / リベラリズム / コスモポリタニズム / シンガポール |
Research Abstract |
本研究の目的は、経験によって知らされる人間の自然本性はグローバルな正義論の道徳的基礎となりうるのかという問いについて、考察を深めることである。そのため、独自のケイパビリティ・アプローチをグロティウス流の自然法論とのつながりにおいて展開しているヌスバウムを中心的な研究対象とする。本年度の研究実施計画では、グローバルな正義論を真の意味で「グローバル」にするため、非欧米社会の視点を取り込むことに力点がおかれた。キリスト教を背景としていない地域を対象とする場合でも、ヌスバウムのグローバル正義論は適用されうるのか否かを見てみるためである。本年度に実施した研究の成果としては、第一に、政治思想学会で本研究の成果の一部を発表した。これまでリベラリズムは女性の福利をじゅうぶんに扱うことができないとされてきたが、リベラリズムに基づくヌスバウムのケイパビリティ・アプローチは、人間のケイパビリティの閾値を保障する政治に焦点を合わせることにより、国内外の女性の福利を向上させ議論に寄与しうることを示すことができた。第二に、アメリカにおける愛国主義を批判するヌスバウムのコスモポリタニズムをナショナリズムと比較検討した論文「コスモポリタニズムとの論争」が『ナショナリズムの政治学』に収録された。第三に、シンガポールに出張し、自然法論のアジアにおける受容に関する資料を、シンガポール国立大学およびシンガポール国立図書館で収集した
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