2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720010
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Research Institution | Tokiwa University |
Principal Investigator |
松崎 哲之 Tokiwa University, 人間科学部, 専任講師 (40364484)
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Keywords | 中国思想 / 春秋 / 礼 / 浙東学 |
Research Abstract |
本研究は、宋学において春秋学が果たしてきた役割を礼学の視点から位置づけていこうとするものである。中国思想の一代転換期は、宋学の勃興であり、宋学とそれ以前の学問では、その存在論的基盤である天観に大きな変化があったといわれる。宋代の学問を根本において把握するためには、まずそれを確認しなくてはならない。そのため、宋学の天観を検討する前段階として、唐代の天観についての考察を、唐代に成立した注疏を通じて行った。その成果が「注疏における五行神と社稜神について -孔穎達と賈公彦の解釈を中心として-」である。それによって、唐代では、形而上学世界において天地の神々の秩序が構築され、それを基礎として現実の秩序が構築されていることが確認できた。 また、宋学が現実の中でいかに受容されていたのかを明らかにすることも、この研究の目的であった。宋代は、科挙の完全実施により、科挙合格者を輩出できない家族は没落し、離散する傾向にあった。それを防止するために宗族制という周礼由来の制度が利用されていた。そこで、宋学が宗族制の中にいかに反映されているのか検討した。そのため、中国浙東地方における宗族制の調査をおこなった。実際に現地に赴き天一閣の蔵書を調査した結果、家譜など宗族制に関する書物が積極的に収集保管されており、浙東地方では宗族制度が非常に重要視されていることが確認できた。また、浙東地方の宗族制の思想についても、清代初期の浙東学者萬斯大の『学禮質疑』を通じて検討した。その結果、宗族制の思想の根本にも天が置かれていること、その天は具体的な天の運行が理念化されたものであることが確認できた。それについては現在執筆中である。
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