2007 Fiscal Year Annual Research Report
版本と異なる日本古写経の漢訳仏典研究-『五王経』『普賢菩薩行願讃』を中心に-
Project/Area Number |
19720014
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Research Institution | International College for Postgraduate Buddhist Studies |
Principal Investigator |
林寺 正俊 International College for Postgraduate Buddhist Studies, 仏教学研究科, 研究員 (60449361)
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Keywords | 仏教学 / 日本古写経 / 五王経 / 普賢菩薩行願讃 / 音写 |
Research Abstract |
本研究は、経題が同一でありながらも版本一切経とは内容を異にする日本古写経中の漢訳仏典のうち、インド仏教との関連を視野に入れた上での検討が必要と判断される小乗経典の『五王経』と大乗経典の『普賢菩薩行願讃』の二経典について、その全容を総合的に解明し、従来の版本一切経だけからは知られない仏典の新たな様相を明らかにすることを目的としている。以上の目的を達成するために、当該研究期間の初年度に当たる平成19年度はそれぞれ以下の研究を遂行した。 (1)『五王経』 まずは基礎的な作業として、金剛寺本・七寺本をそれぞれ翻刻し、それら両本をもとにして校訂テクストを作成し、さらにそれを訓読した。その基礎作業をもとに、版本『五王経』と日本古写経『五王経』との間に見られる三つの相違点を明確にし、両系統のテクスト相互の関係について考察した。その結果、日本古写経『五王経』の方が版本『五王経』よりも古いという可能性が見えてきたが、この点についてはさらに詳細な検討を加える必要がある。 (2)『普賢菩薩行願讃』 金剛寺の蔵する二つの『普賢菩薩行願讃』はいずれも従来の漢訳とは異なるサンスクリットの音写テクストであるが、これらを高精度のデジタルカメラで撮影し、あわせて写本の法量も調査した。この撮影データをもとにして、異体字・難字の専門的な辞書類を用いながら両写本の翻字を完成させ、さらに両写本に基づく校訂テクストも作成した。今後は、翻字テクストとサンスクリット文との対照作業を通して、当テクストの特徴や性格などについて検討を進める。
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