2008 Fiscal Year Annual Research Report
版本と異なる日本古写経中の漢訳仏典研究-『五王経』『普賢菩薩行願讃』を中心に-
Project/Area Number |
19720014
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Research Institution | International College for Postgraduate Buddhist Studies |
Principal Investigator |
林寺 正俊 International College for Postgraduate Buddhist Studies, 仏教学研究科, 研究員 (60449361)
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Keywords | 仏教学 / 日本古写経 / 『五王経』 / 編集経典 / 『普賢菩薩行願讃』 / 音写 / 不空 |
Research Abstract |
本研究は、経題が同一でありながらも版本一切経とは内容を異にする日本古写経中の漢訳仏典のうち、インド仏教との関連を視野に入れた上での検討が必要と判断される小乗経典の『五王経』と大乗経典の『普賢菩薩行願讃』の二経典について、その全容を総合的に解明し、従来の版本一切経だけからは知られない仏典の新たな様相を明らかにすることを目的としている。以上の目的を達成するために、当該研究期間の第2年目に当たる平成20年度はそれぞれ以下の研究を遂行した。 (1)『五王経』 本年度は、金剛寺本・七寺本を翻刻した上で作成した校訂テクストをもとに、版本『五王経』と古写経『五王経』との間に見られる三つの相違点を様々な角度から検討し、異なる『五王経』相互の関係について考察した。その結果、版本系『五王経』は古写経『五王経』を下敷きにしながら編集されており、しかもまさにその編集によって文脈的な不自然さや意味内容の変化が生じていることが判明した。この知見を論文にまとめて発表した。 (2)『普賢菩薩行願讃』 七寺所蔵『普賢菩薩行願讃』写本が金剛寺本と同じ系統に属するサンスクリットの音写本であるのかどうかを明らかにするために実地調査を行ったが、結果的に七寺本は従来知られている通常のテクストと同一であることが分かった。 また、本年度は、異体字の専門的な辞書類を用いて昨年度に完成させた金剛寺本『普賢菩薩行願讃』の翻刻とサンスクリットの原文とを比較対照することによって、単語毎に音写語の区切りを明確にし、梵漢の語彙対照表(索引)を作成した。その上で、当資料の性格と特色、また作成された時代や背景について検討を進めたところ、金剛寺本の音写は不空訳『普賢菩薩行願讃』が依拠したであろう梵文テクストに近いことが明らかになった。この知見を学会において口頭発表した。
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Research Products
(2 results)