2007 Fiscal Year Annual Research Report
『ナーマサンギーティ』の諸註釈書に見られるインド仏教思想の解釈の展開について
Project/Area Number |
19720015
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Research Institution | Shuchiin University |
Principal Investigator |
SHAKYA SUDAN Shuchiin University, 仏教学部, 講師 (60447117)
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Keywords | 仏教学 / インド思想 / インド密教 / 「法界語自在マンダラ」 / インド哲学 / ネパール仏教 / 『ナーマサンギーティ』 |
Research Abstract |
平成19年度は平成21年度までの研究期間の一年目である。この一年間は、『ナーマサンギーティ』(以下NS)に関する註釈の中で、マンジュシュリー・キールティ著『ナーマサンギーティ大註釈』(Toh 2534,Ota 3357)と共にアドヴァヤヴァジュラ著『ナーマサンギーティ広釈』(Toh 2094,Ota 2943)及びラヴィシュリージュニャーナ著『アムリタカニカー』(Toh 1395,Ota 2111)の精読を行なってきた。今年度は、NS関連の文献として、マーヂャミカナンダ著『ナーマサンギーティ註』(Toh 2540,Ota 4831)に加え、マンジュシュリー・キールティ著『マンダラ儀礼』(Toh 2589,Ota 3416)の解読を進めて来た。NSにおいて文殊の異名として登場する一つの言葉がそれらの諸註釈書でどう解釈をされているか、その違いを探ることを通じて、インド仏教思想の解釈の変遷を探ることができる。これまでの文献解読から得られた成果の一部をここで報告する。 NSは、文殊智慧薩の特徴を様々な名号をもって称讃する偈頌とそれによって得られる功徳を説く長文から構成されている。つまり、マンダラなどに関する言及が存在しない。「法界語自在マンダラ」はインド密教において重要なマンダラとして認識され、これはNSに基づいたマンダラとして知られている。しかし、それを説く典拠となっている偈頌は明らかにされていない。そこで、上記で示した文献の記述を考察した結果、「法界語自在マンダラ」を説く典拠はNSの第115偈頌であることを明確にすることができた。さらにその名称は元来の「虚空の如く無垢であり極めて清浄な法界の智の心髄という大マンダラ」から展開したものであることも明らかにした。このように、マンダラの典拠をすこと及びマンダラ名称の変更を示すことはインド仏教思想の成立を解明する上で重要な資料であると考える。今後、さらに文献解読を継続し、上記の諸文献の解釈を進め、NSに登場する文殊を称讃する名号の解釈の比較を行うことを課題としている。
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Research Products
(5 results)