2008 Fiscal Year Annual Research Report
リッポ・ディ・ダルマジオを中心とするボローニャの後期ゴシック美術とその評価・受容
Project/Area Number |
19720022
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
高橋 健一 Wakayama University, 教育学部, 准教授 (70372670)
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Keywords | 美術史 / 美学 / イタリア / ゴシック / ボローニャ |
Research Abstract |
画家リッポ・ディ・ダルマジオ(1350年頃〜1410年)は、前近代の美術史叙述においてはボローニャの後期ゴシックを代表する画家とみなされながら、それ以後には今日まで不当にも軽視されている。 今年度は、その生涯と作品、そして後世における受容・評価に関する基礎的な調査・研究を、前年度に継続しておこなった。とりわけ、ボローニャの教会サンタ・マリア・ミゼリコルディアにあるその代表作《謙譲の聖母》については、現場で詳細に調査・観察し、さらには良好な条件を確保した上で写真を撮影している。そのプレデッラとして構想・実現されたフランチェスコ・フランチャの作品(現在ボローニャ国立絵画館所蔵)は、画家リッポの受容・評価の問題を考える上できわめて重要な作例だが、それについてはボローニャ美術監督局の写真アーカイヴにて良質の写真を入手したうえで、ボローニャ市立国書館アルキジナジオ、ボローニャ国立古文書館そしてボローニャ大学図書館にて文献調査をおこなった。 リッポの作品のコピーとして最も早い時期に制作されたフランチェスコ・カッチアグエッラの作例については、その注文の契約書をボローニャ国立古文書館にて確認し、複写・読解した。リッポ・ディ・ダルマジオを愛した17世紀の大画家グイド・レーニによるその受容の問題にも取り組みはじめ、明らかにリッポの作品にもとづいて描かれた数点の作品について、ウィーンのアルベルティーナ版画素描館等の機関で調査をおこなった。とりわけグイド・レーニの失われた大作、いわゆる《タナーリ家の聖母》にもとづくマウロ・ガンドルフィの版画によるコピーの観察からは、有益な結果がえられた。さらには、おなじくリッポを愛した16世紀の宗教人ガブリエーレ・パレオッティの美術理論書『聖俗画像論』(1581/82年)を、多くの時間をかけて読解している。
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