2009 Fiscal Year Annual Research Report
リッポ・ディ・ダルマジオを中心とするボローニャの後期ゴシック美術とその評価・受容
Project/Area Number |
19720022
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
高橋 健一 Wakayama University, 教育学部, 准教授 (70372670)
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Keywords | 美術史 / 美学 / イタリア / ゴシック / ボローニャ / グイド・レーニ / ガブリエーレ・パレオッティ |
Research Abstract |
画家リッポ・ディ・ダルマジオ(1350年頃~1410年)は、前近代の美術史叙述においてはボローニャの後期ゴシックを代表する画家とみなされながら、それ以後には今日まで不当にも軽視されている。 今年度は、その生涯と作品、そして後世における受容・評価に関する基礎的な調査・研究を、前年度に継続しておこなった。とりわけ、同画家の批評史を構成する上で鍵となるガブリエーレ・パレオッティ枢機卿の美術理論書『聖俗画像論』(1581/82年)の読解には、多くの時間を費やした。この宗教人にリッポ・ディ・ダルマジオの重要性を説いた建築家・版画家ドメニコ・ティバルディのテクストも、あわせて参照、筆写、読解している。 ボローニャの教会サンタ・マリア・ミゼリコルディアにあるリッポ・ディ・ダルマジオの代表作《謙譲の聖母》については、研究をさらに深めた。そのプレデッラとして構想・実現されたフランチェスコ・フランチャの作品(現在ボローニャ国立絵画館所蔵)は、画家リッポの受容・評価の問題を考える上できわめて重要な作例だが、その特異なアウグスティヌス主題の図像については、細部の観察、そして前後の作例との比較から、新たな解釈の可能性を模索し、成果を得つつある。 また、現地イタリアにおける調査では、前年度までの仕事の補完的な作業を多数こなした。これらの調査・考察の結果を整理・総合して、リッポ・ディ・ダルマジオ論の執筆の段階にはいっている。同画家に関連する作品のカタログ(その真筆作品はもちろん、かつてこの画家にいちどでも帰属されたことのある作品のすべてをもふくむ)については、おおかたまとまっている。
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Research Products
(1 results)