2008 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚文化論-所有・空間・メディアをめぐる音楽美学の再構想
Project/Area Number |
19720025
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
増田 聡 Osaka City University, 大学院・文学研究科, 准教授 (50325304)
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Keywords | 美学 / 芸術諸学 / 社会学 |
Research Abstract |
聴覚文化論の理論的動向を摂取するとともに、美学・文化研究との接合を図るべく、京阪神の若手研究者による研究会を組織し、昨年度に引き続き継続的に開催した。近年のアメリカ聴覚文化論の代表的成果、Jonathan Sterne,'The Audible Past'(Durham : Duke University Press, 2003)の精読を行い、その翻訳刊行計画を進行させる一方、その準備作業として、聴取技法の歴史的展開をメディア論や都市空間論へと接合するための理論的諸問題について検討した。また、7月にアジア各国のポピュラー音楽研究者を招いた国際集会、インターアジア・ポピュラー音楽研究会議を大阪市立大学都市文化研究センターにおいて開催し、アジア諸国の都市空間における聴覚文化に関する討議に参加した。さらに、共同研究員として参画している国立国際日本文化研究センターの共同研究「文化の所有と拡散」での議論を踏まえつつ、視聴覚文化とデジタル・メディアの問題系についての理論研究を進行させ、音楽のデジタル化に伴う美学的諸問題を検討した論文(著書の分担執筆)として公刊した。関連する論点として、デジタル音楽テクノロジーと身体性の関連についての美学的分析を行い、論文(著書の分担執筆)として公刊した。さらに、近年の新しい電子音楽機材である人工音声アプリケーションの美学的構造が、音楽の所有、空間布置にもたらす影響について分析し、論文として公刊した。その他、関連する萌芽的な論点について、公開シンポジウム等において報告を行った。これらの理論的研究は、本研究課題の中核的な論点をなすものであり、現代的なメディアスケープに置かれた聴覚文化が、所有関係やアイデンティティ、身体性や空間布置の点で、いかなる様態を成しているかを明らかにするものである。
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