2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720029
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山本 恵子 Waseda University, 文学学術院, 助手 (70434248)
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Keywords | 美学 / 西洋哲学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ニーチェの芸術思想および彼の思想全般において「生理学」という概念装置が果たす役割を明らかにすることである。その中でも本研究はとりわけ、彼の後期美学の中心概念である「芸術の生理学」を論じることに主眼をおき、芸術を生理学として考察することの意義とアポリアとを明示することを具体的な目標としている。2007年度においては、その目標への前段階として、以下の3点について発展的な成果を得ることができた。 (1)初期から後期へのニーチェ思想全体の変遷と、初期から後期への「生理学」概念の変容との間にパラレルな関係があることを証明した。また、本研究費の補助により、ギムナジウム時代等にニーチェが受けた生理学的な影響の有無について、ドイツ・ヴァイマールのゲーテ・シラー・アルヒーフに保管されているニーチェの生活記録を現地調査することができた(2007年8月)。なお、以上の研究成果を、『ニーチェと生理学-「芸術の生理学」構想への道-』の中で公表した。 (2)従来論じられることの少なかった中期著作における「生理学」の扱いについても考察を進めた。論文「「道徳の生理学」とは何か-中期ニーチェによる道徳批判の萌芽-」等において論じた。 (3)「芸術の生理学」の理論上の立場が、どのように芸術家の芸術作品の具体的な評価へとつながっているか、という点に関する研究も進みつつある。この問題については論文「身体化される美、美化される力-ニーチェにおけるヴァーグナー批判再考-」等で扱った。 2008年度は引き続き、とくに(2)(3)の観点を発展させて論じていく予定である。そのためには、ニーチェ中期の美学をより詳細に論じること、また、ニーチェが言及した芸術家についてさらに多くの人物を論じていくことが必要であると考えている。
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Research Products
(5 results)