2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720029
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山本 恵子 Waseda University, 文学学術院, 助教 (70434248)
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Keywords | 美学 / 西洋哲学 / 生理学 / 芸術 |
Research Abstract |
2007年度末には、ニーチェの「生理学」についての概念史的考察である『ニーチェと生理学-「芸術の生理学」構想への道-』を出版し、ニーチェにおける生理学研究の骨子と可能性を広く示唆した。2008年度はそのさらなる展開をより仔細なテーマにおいて目指した。第1に、ニーチェがしばしば重要視する「健康Gesundheit」という概念についての研究を行った。健康という概念が医学・生理学の進歩によって規定されるものであるという既存の概念が覆され、また健康を画一的なものと捉える見方が人間の平等というドグマに侵されたものとして積極的に否定されるニーチェの主張が確認された。またキリスト教の光学によって文化的意図に侵されている同時代の健康概念を批判し、本来的な健康へと導こうとするニーチェの道程の意義と困難さについても本研究は示した。なお以上の研究成果を、ハイデガー研究会例会ならびに日本ショーペンハウアー協会主催第9回ニーチェ・セミナーにて発表した。第2に、エドゥアルト・フォン・ハルトマンにおける無意識の概念がニーチェの生理学的思索に与えた影響についての研究を開始した。その途中経過を、日本シェリング協会第17回大会にて発表し、主にハルトマンの『無意識の哲学』における無意識と感情の関係についての内在的理解に努めた。最後に、ニーチェの生理学に関する研究は、当時活躍していたさまざまな生理学者との関係性を細かく読み解いていくことで、さらに発展する可能性を秘めており、今後も研究の継続が必要であることを付言しておきたい。
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Research Products
(6 results)