2008 Fiscal Year Annual Research Report
ロシア正教古儀式派における聖人図像研究-ヴィグ共同体のイコンを中心に-
Project/Area Number |
19720033
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Research Institution | Toyama National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
宮崎 衣澄 Toyama National College of Maritime Technology, 国際流通学科, 講師 (70369966)
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Keywords | 美術史 / イコン / ロシア正教古儀式派 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ヴィグ共同体をはじめとするロシア正教古儀式派の手によるテンペラ画のイコンをとりあげ、同じ聖人をモチーフに描いた正教会のイコンや儀軌、写本の挿絵、フレスコ画などとの比較分析を通じて、聖人の図像における流派別、時代別変遷を示すことにより、これまで殆ど解明さていない古儀式派のイコンの全体的な傾向と特性を明らかにすることである。本年度は、正教会と古儀式派の両方で崇敬された聖人であるマクシム・グレク(1470-1556)の図像の蒐集と分析を中心に行った。 イコンでは、モスクワのアンドレイ・ルブリョフ美術館、サンクトペテルブルグの宗教博物館、エルミタージュ美術館、ロシア美術館所蔵作品の調査を行い、素描と写本装飾の図像では、モスクワの国立歴史博物館所蔵作品、フレスコ画ではザゴールスクのトロイツァ・セルゲイエヴァ大修道院と、幅広い調査を行った。 調査の結果、18世紀中期以降に制作された古儀式派のマクシム・グレクの図像には共通する特徴が多く、マクシムが古儀式派信仰を支持する内容の写本を持つなど、古儀式派の聖人としての立場が強調されていることが明らかになった。一方、同聖人の没後すぐに描かれた正教会の作品では、時代や素材(フレスコ画であるか、写本であるか)によってマクシムの図像に大きな差異が認められ、18世紀以降の古儀式派の図像に共通する特徴も確認された。来年度は、昨年度までに蒐集した図像を素材別、時代別に分類することによってそれぞれの特徴を明確化し、文献資料における調査と併せて、本研究の総まとめを行う。
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Research Products
(1 results)