2009 Fiscal Year Annual Research Report
江戸前期町絵師の活動状況についての研究-尾形光琳を中心に-
Project/Area Number |
19720034
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Research Institution | National Research Institute for Cultural Properties, Tokyo |
Principal Investigator |
江村 知子 National Research Institute for Cultural Properties, Tokyo, 企画情報部, 研究員 (20350382)
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Keywords | 美術史 / 近世絵画 / 尾形光琳 / 琳派 |
Research Abstract |
これまでの美術史研究、ことに近世絵画史研究においては、個々の作家や作品を主軸に研究が進展してきたため、相対的な考察が不十分であった。日本絵画の画題、技法、表現は、伝統の継承と革新を繰り返しながら発展してきており、個々の特徴や事象を相対化することが求められる。本研究では尾形光琳の活動状況を共時的視点から捉えることにより、江戸前期の町絵師の活動状況を明らかにすることを目的とし、光琳の代表的作例である「燕子花図屏風」(根津美術館蔵・国宝)、「孔雀立葵図」(個人蔵・重要文化財)、「草花図巻」(個人蔵)などを例にその制作背景や作品受容について論証した。最終年度である本年度は、前年度までにデータ化した『小西家旧蔵・尾形光琳関係資料』を取りまとめ、光琳の事跡および周辺の事跡について、他の文献資料も参照しながら考察を進め、17世紀末から18世紀初頭にかけての光琳の作画と制作背景について明らかにした。文献から確認できる光琳およびその周囲の人間関係、交際関係が、光琳の画業と密接に結びついていることを例示した。また歴史的経過という視点から見ると、中世から近世にかけての絵画表現様式の流れをとらえ、その流れのなかに技法や表現の特徴を相対化していくという作業の重要性が浮かび上がる。こうした問題点から、光琳に先行する17世紀前半の人物表現、とくに風俗画を例に画題、表現、様式の継承と変遷について具体的に考察を行った。室町時代以前のやまと絵や漢画の伝統や表現様式が、江戸時代初期にどのような変容を遂げ、そして後の光琳など江戸中期の画家たちに継承されていくのか、という視点から考察を行った。本研究の成果は、今後作品研究を行う上でも、総合的な研究へと展開していく基盤として位置づけられる。
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