2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720035
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Research Institution | The National Museum of Western Art, Tokyo |
Principal Investigator |
平山 東子 The National Museum of Western Art, Tokyo, 独立行政法人・国立美術館国立西洋美術館・学芸課, リサーチフェロー (50421839)
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Keywords | 古代ギリシア / 陶器 / 地中海 / 神話 / 東方化様式 |
Research Abstract |
本研究は,紀元前6世紀前半を中心として,古代ギリシアのアテネで制作されたアッティカ黒像式陶器の確立のプロセスと展開を跡付け,およびその古代地中海世界における社会的機能を明らかにすることを目的としている.本年度は,まず初期アッティカ黒像式陶器の確立に一定の役割を果たしたと考えられる逸名の画家「KXの画家(KX Painter)」の作品研究とその関連文献の収集を行った.夏期には現地調査を実施し,アテネ,コリントス,オリンピアおよび,エーゲ海島嶼部において,遺跡と博物館を中心とした資料収集を行った.とくにコリントス,オリンピアでの調査では,数々の資料から,初期アルカイック時代におけるフェニキア,エジプト,アナトリア,アッシリアなどの東方先進諸国とギリシア世界との交流の規模と,コリントス陶器および初期アッティカ陶器に及ぼした影響の大きさを確認することができた.また,アテネでは,「KXの画家」の手に帰属される作品とその周辺作品の調査と画像資料の収集を行い,ミコノスでは,未だ詳述されていないアッティカ初期黒像式陶器に関する知見を得ることができた.それは,本研究の課題であるコリントスの強い影響下にあった「KXの画家」とその一派がアッティカ黒像式陶器の陶画様式を確立するにいたる基盤を築いたと推測されるプロセスを考える上で大きな手がかりとなるものであった.来年度は引き続き,現地での作品調査と,同画家の作品研究を継続し,これまでに集積したデータと併せて分析作業を行い,年度内に研究成果を論文として公表する予定である.
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