2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720037
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Research Institution | Kanagawa Prefectural Museum of Cultural History |
Principal Investigator |
角田 拓朗 Kanagawa Prefectural Museum of Cultural History, 学芸部, 学芸員 (80435825)
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Keywords | 美術史 / 美術教育史 / 科学技術史 |
Research Abstract |
平成20年度は、主に明治前半期における五姓田派の素描群に関して研究をすすめた。本研究の目的である近代絵画史という大枠での鉛筆の効果について考察をおこなうにあたり、前年平成19年度には文献調査をもとに調査対象の全体像を把握することにつとめた。その結果、明治前半期には五姓田義松を核とする五姓田派の面々が印したその足跡が、非常に得意なものであると予想されたことから、五姓田派を重点的に検証した。 その際、以下の二つの方向性から、検証を加えた。第一に、言説的側面から。第二に、造形的側面から。第一の点について具体的には、鉛筆という存在が現在までつらなる美術史の言説において有意義なものとして語られていたのか、あるいは作家や作家集団を語る祭の特徴として見なされていたのかについて、「近代日本洋画史」という歴史館の形成をにらみつつ論じた。また第二の点について具体的には、神奈川県立歴史博物館所蔵五姓田義松旧蔵作品群と、岡山県立美術館所蔵渡辺文三郎旧蔵作品群並びに同館所蔵松原三五郎旧蔵作品群との比較考察をおこない、五姓田派内部の技術継承の様相を具体化した。さらには東京国立博物館所蔵満谷国四郎素描群とそれらの比較もおこない、明治前半期に鉛筆を主たる画材として継承された技術が存在したことを、明治前半期の美術教育の現状なども視野に入れつつ論じた。最後の研究は、次年度以降展開する予定の明治後半期以後の鉛筆の存在意義を考察することにつながるものである。
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