2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720044
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
横田 隆志 Kobe University, 大学院・人文学研究科, 講師 (90403211)
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Keywords | 中世文学 / 長谷寺験記 / 南都 |
Research Abstract |
本年度は長谷寺および国立文化財機構奈良文化財研究所における関連資料の調査を重点的に行った。 長谷寺では『長谷寺縁起文』をはじめとする古写本の調査を実施した。とりわけ『長谷寺縁起文』の最古本と推測される写本を調査できたことは本研究計画にとって重要であり、長谷観音伝承の形成と展開を知る上で基礎的かつ重要な知見を得ることができた。 一方、奈良文化財研究所では中世の長谷寺を支配した興福寺大乗院に関する資料調査を行った。具体的には『興福寺典籍文書目録』および同研究所で撮影した関連資料の影引を調査し、中世の長谷寺がおかれていた諸状況および伝承の展開の実態についての知見を深めた。例えば興福寺典籍文書46函之9号『諸寺縁起』長谷寺条には校刊美術資料として公刊されている『諸寺建立次第』の本文とはやや異なる記述が確認され、説話の流動という現象を考える上で注目された。 本年度は以上に記した調査等を通じて、長谷観音伝承の収集と目録化を行うための基礎作業の行うとともに、長谷寺の善悪諸神に関する研究論文を公にした。 『長谷寺験記』によれば、長谷観音はきわめて慈悲深い存在として喧伝されているが、その一方で長谷山口神や石精童子をはじめとする長谷観音の眷属神は、一切の妥協を許さず、場合によっては即座に人の命を召す存在として描かれている。こうした一種の開き直りすら感じさせるこうした説話の世界は一体どのような背景のもとに生まれたのか。こうした問題意識のもと、本論文では、当地を守護し人々にさまざまな霊験を示す長谷寺の善悪諸神につき考察した。
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Research Products
(1 results)