2007 Fiscal Year Annual Research Report
西山宗因を中心とした連歌師の行動様式と武家文化の相関性に関わる研究
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19720046
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
尾崎 千佳 Yamaguchi University, 人文学部, 准教授 (50335759)
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Keywords | 西山宗因 / 加藤正方 / 肥後道記 |
Research Abstract |
本年度は、大名文化圏と連歌帥宗因との関係性を明らかにするために、主家加藤家との関わりを具体的に示す資料について、集中的に調査、分析、成果公表を行った。 まず、福岡県行橋市の個人が所蔵する連歌懐紙を調査し、その筆蹟を宗因自筆他本と比較検討ずることによって、それが宗因自筆にかかる百韻であることを解明した。宗因と同座する当該百韻の連衆が、もと肥後八代加藤家旧臣で、加藤家改易後、小倉小笠原家に召し抱えられた儒医西一鴎の一族で占められていることも判明した。本連歌懐紙の出現によって、宗因が連歌師として成功した後も、その出身たる加藤家旧臣との繋がりを保っていた事実がうかびあがり、小笠原家による連歌師宗因登用の背景に、加藤家の身代わりとしての意識を垣間見ることができるようになった。以上につき、「再会の一座一新出の宗因筆連歌懐紙をめぐって」と題する論文にまとめ、『鯉城往来』第10号に投稿し、掲載された。 次に、高知県佐川町立青山文庫所蔵の宗因紀行文『肥後道記』の本文を精査し、あわせて、その伝本たる天理図書館綿屋文庫本、財団法人水府明徳彰考館文庫本、大阪府立大学山崎文庫本、熊本県立図書館上妻文庫本を調査した。諸本対校の結果、『肥後道記』の本文は、青山文庫本系統と綿屋文庫本系統の二類に大別されることが明らかとなった。さらに、本文の精読によって、『肥後道記』の最も重要な典拠は『源氏物語』須磨・明石巻であり、それが、源氏の像を主君加藤正方の像に重ねるべく機能しているとの論を得た。以上につき、『肥後道記』の典拠と主題」と題して、平成十九年度日本近世文学会秋季大会で口頭発表を行い、同題の論文にまとめて『近世文藝』第88号に投稿し、査読を経て掲載が決定した。
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