2009 Fiscal Year Annual Research Report
西山宗因を中心とした連歌師の行動様式と武家文化の相関性に関わる研究
Project/Area Number |
19720046
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
尾崎 千佳 Yamaguchi University, 人文学部, 准教授 (50335759)
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Keywords | 西山宗因 / 連歌 / 俳諧 |
Research Abstract |
今年度は、一昨年度・昨年度に実施した調査によって出現した新出の宗因自筆資料の分析をおこなうかたわら、本研究課題に沿って実施する研究の総括として、特に下記2項につき、資料の分析と整理をおこなった。 (1) 宗因紀行文の調査と分析(その三) 『奥州塩竃記』につき、宗因自筆にかかる(1)個人蔵巻子本・(2)福岡市東長寺蔵巻子本・(3)学習院大学文学部蔵巻子本・(4)酒田市本間家蔵巻子本・(5)藤井乙男紹介某本の5本を対象として本文を校合した結果、巻末に娘追悼百韻を有する(2)および(3)と、(2)(4)(5)とでは、本文部分にも大きな異同の存することが判明した。(1)(3)の結末が述懐であるのに対し、(2)(4)(5)は祝言で締め括られており、作品そのものの主題が正反対になっている。娘追悼百韻を有する(1)(3)が本来の形であったが、事後、求められて染筆する折には、客振舞の場に備えるに相応しいよう、哀悼の結末を敢えて切り捨て、賀のモチーフに変えたものと思われる。『奥州塩竃記』における本文・主題の改変は、連歌師の文章をめぐる本質的な問題を孕んでいると考える。精査を加えて論文化を期したい。 (2) 近世初期武家連歌壇における連歌師宗因の位置の考究 新出の宗因自筆書簡・短冊・評点評語を整理し、岩城平藩主内藤氏・小倉藩主小笠原氏・明石藩主松平氏らの諸侯と宗因との交渉について、年次を追ってまとめ、その背景に加藤家の影響が透かし見られるか否か、総合的に考察した。具体的な成果は、前稿「西山宗因年譜稿」(『ビブリア』第111号、平成11年5月)を発展させた「西山宗因年譜考証」(『西山宗因全集 第五巻 伝記・研究篇』、八木書店、平成22年7月発行予定)にまとめた。
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Research Products
(2 results)