2008 Fiscal Year Annual Research Report
江戸時代中期における漢詩文の日本化の様相-日本人は漢詩文で自己表現し得たか-
Project/Area Number |
19720048
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中島 貴奈 Nagasaki University, 教育学部, 准教授 (10380809)
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Keywords | 比較文学 / 漢文学 / 国文学 / 中国文学 |
Research Abstract |
平成20年度は、江戸時代中期を代表する漢詩人のひとりである六如上人の漢詩について, 影響の大きかったとされる中国宋代の詩文との比較を中心に考察した。まず六如上人の詩には「詩作」「詩作行為そのもの」を詠ずる表現が多く見られることを指摘し, そうした表から六如上人が「詩」と「景」, さらには「詩人」との関係をどのように捉えていたかを明らかにした。さちに, そこには主として宋代の詩人の「詩」や「詩句」に対する考え方が反映していると結論づけ, 当該論文は「解釈と鑑賞」漢詩文特集号に掲載された。 また後半は, 同じく六如上人の「蛙」を詠じた詩に着目した。まず中国において「蛙」が季節をあらわす景物として多く描かれるようになるのは主に宋代以降であることを明らかにしたうえで, 六如上人の「蛙」詠にも宋代の詩人の影響が見られることを明らかにし, 和漢比較文学会大会において口頭発表をおこなった。 口発表の際にいただいた助言・意見をふまえ, さらには日本文学における伝統的な「蛙詠」との比較の視点もとりいれたうえで考察を深め, 六如上人の「蛙」詠には中国宋代の影響のみでなく, 和歌や俳句の「蛙」詠の特徴を積極的に取り入れてゆこうとする姿勢が見られることまで論じ, 「国語と教育」に発表した。 また, 六如上人の漢詩文を, 手作業による入力とスキャナーによる読み取りによってデータベース化する作業も進めた。
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Research Products
(3 results)