2009 Fiscal Year Annual Research Report
江戸時代中期における漢詩文の日本化の様相―日本人は漢詩文で自己表現し得たか―
Project/Area Number |
19720048
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中島 貴奈 Nagasaki University, 長崎大学教育学部, 准教授 (10380809)
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Keywords | 和漢比較文学 / 江戸漢詩 / 日本漢文学 |
Research Abstract |
平成21度(4月~12月)は前年度に引き続き、江戸時代中期の詩人六如上を中心とし、中国文学との影響関係並びに日本化の様相についての考察をおこなった.今年度は特に、六如上人の詩に季節の境目(初夏・晩夏等)を詠じたものが多い点に着目し、日本文学との影響関係について考察した。その結果現段階では、季節の移り目を詠じた詩は中国の詩にも見られないわけではないが、その詠まれ方(景物・表現)においては、六如上人のはむしろ日本文学に見られる季節表現に近似すると結論づけている。 同様に、六如上人の詩に見られる「諧謔性」についても考察をおこなった。「諧謔性」は六如上人の詩の重要な特徴の一つと考えちれるが、中国の詩立とりわけ宋詩との比較検討を通じて、その表現においては、宋詩の影響が少なぐないと考えている。 また、六如上人の著作のデータベース化の作業については、漢詩作品に関しては近年江戸漢詩のCD-ROMが発売されたため、ひとまず作業を中断し、詩話の入力・チェック作業を行った。これについては、発表できる形に整えて行く予定である。 今年度(12月まで)は以上のような研究成果が得られたが、体調不良のため、難誌・学会・ネット等における発表には到らなかったこと、またこれまでの研究成果をまとめるに到らなかったことを書き添えておく。
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