2007 Fiscal Year Annual Research Report
王政復古期文学の変容と<他者>表象の関連についての研究
Project/Area Number |
19720057
|
Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
福士 航 Kitami Institute of Technology, 工学部, 准教授 (10431397)
|
Keywords | 英文学 / 演劇研究 / 十七世紀 / Aphra Behn / ポストコロニアル批評 |
Research Abstract |
本研究は、アフラ・ベイン(Aphra Behn)の文学テクストにおける<他者>表象の多様性を、ジェンダー、政治、人種、階級、文化的振る舞いのコードなどの観点から明らかにすることを目的とする。その中で、演劇テクストの分析を一つの重点的作業とし、ベインが劇場という文化的装置の特徴を利用し、多様なく他者〉の像をいかに表現していたかを示す。そのために今年度は、ヴァージニア植民地を舞台とした演劇作品『未亡人ランター(The Widow Ranter)』における<他者>表象の分析を行った。その結果を「創造の王権-『未亡人ランター』における<他者>表象とパフォーマンス」という論題で、論文集『ポストコロニアル批評の諸相』に発表した。従来、ジェンダーや人種の観点のみから論じられることが多かった作品を、それらに加えて振る舞いのコードという観点からも読み直した論考で、これまでの研究とは異なる視点から論じた点に学術的意義がある。具体的には、ヴァージニア現地人の表象に、旧時代の英国上流階級の振る舞いのコードが書き込まれていること、更には、ヴァージニアに入植した英国人の粗野な振る舞いに、王位継承排除危機の際に流布した議会派の表象が重ね書きされていることなどを指摘した。人種的<他者>の表象においては、ヴァージニア現地人を、上演時の視覚的効果によって「後進的な現地人」というステレオタイプを固定化するような力学が作用していることを指摘した。また、多様な<他者>表象の諸側面によって逆照射される「英国的自己」が作品に内包されていることを論じた。この点は、近年歴史学研究の分野で盛んに行われている「イングリッシュネス(Englishness)」の形成過程を記述しようとする議論とも接続可能であり、学際的意義もある研究成果と言えよう。
|
Research Products
(1 results)