2009 Fiscal Year Annual Research Report
近代英語演劇におけるステージ・アイリッシュマン表象の政治・文化史的研究
Project/Area Number |
19720058
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岩田 美喜 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 准教授 (50361051)
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Keywords | アイルランド / 演劇 / ステージ・アイリッシュマン / 表象文化 / ハイブリディティ / 非標準英語 / 劇場 / ロンドン |
Research Abstract |
本研究の最終年度にあたる当該年度は、初年度および昨年度に得られた知見を成果として発表することに主に力を入れた。この具体的な例として、2009年5月に行われた日本英文学会シンポジウム第一部門に講師として参加した口頭発表や、2009年9月に発表された論文「The Lady's Tragedyの家政学」などが挙げられる。前者においては、「『西国の伊達男』における語りの喜び」というタイトルで発表を行い、初演の際に暴動を巻き起こしたことで知られる作品、J.M.Synge, The Playboy of the Western World(1907)が、ステージ・アイリッシュマン表象を継承したステレオタイプ的なアイルランド表象を複雑に援用していることを指摘し、シングの戦略と観客の受容の間に存在した戦略知のギャップが暴動を引き起こしたことを検証した。この研究は、シンポジウムでの議論を経て、現在論文執筆中である。後者においては、演劇におけるステレオタイプ表象の問題を<女性>の表象へと発展させ、Thomas Middleton, The Lady's Tragedy(1611)の新しい解釈を模索した。The Lady's Tragedyにおける女性表象は、William Shakespeare, The Winter's Tale(1610)を模しているようでありながら、実はヒロインを徹底した<他者>として描き出しているようで対照的である。この点で、Middletonの女性表象は、本研究者が昨年度発表した論文"The Stage-Irishman's Stratagem : George Farquhar and the Emergence of the Smock Alley School"で論じたGeorge Farquharの劇作品におけるステージ・アイリッシュマンに通底する要素を持っている。Farquharもまた、アイルランド人という<他者>を馴致する意図を持った一般的なステージ・アイリッシュマン表象を転覆させ、その他者性を逆照射したからである。 なお、女性のステレオタイプ的表象の問題は、2009年10月に筑波大学で開催された日本シェイクスピア協会での口頭発表にも続いており、本研究者の今後の研究発展の方向性を示すものとなっている。
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Research Products
(3 results)