2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720063
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
海老根 剛 Osaka City University, 大学院・文学研究科, 講師 (00419673)
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Keywords | 群集 / ヴァイマル共和国 / 群集論 |
Research Abstract |
平成19年度には,実施計画にしたがって第一次世界大戦以前からヴァイマル共和国初期にいたる時期の群集をめぐる言説について文献調査を行うとともに,すでにこれまでに行って来た研究を雑誌論文および博士論文の形で発表した。 文献調査については,二度にわたり東京大学付属図書館に出張し,とくに文学・心理学・社会学関係の文献を収集した。この調査で集められた文献は,後に触れる博士論文の第二章および第三章において考察の対象となっている。 雑誌論文としては,所属研究科が発行する学術雑誌に「群集と〈交通〉-ヴァイマル共和国中期のドイツにおける群集論の変容」と題する論文を発表した。この論文では,とくに1920年代半ばから1930年代初頭にいたる時期のドイツにおいて主題化された群集(大衆)の形象を分析し,そこには共和国初期の群集の形象とははっきりと異なる諸特徴が見いだされることを指摘している。 科研費による研究にもとづく昨年度の成果として最も重要なものは,申請テーマと密接に関連する主題を扱った博士学位論文の執筆と提出である。この博士論文は「忘我・交通・形象ヴァイマル共和国時代のドイツにおける群集論の展開」と題されており,ヴァイマル共和国の群集論の展開を三つの時期に分け,それぞれに時期に特有な理論的パラダイムの存在を指摘し,分析した包括的な研究である(原稿用紙換算620枚)。本論文はこれまでの研究において指摘されることのなかった群集概念の歴史的変容を,学際的なアプローチによって明らかにした研究として高く評価され,3月17日に実施された口頭試問に合格し,学位論文として認定された。この成果は本科研費研究の終了後,科研の成果として出版したいと考えている。
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