2008 Fiscal Year Annual Research Report
博物誌から国家史へ:18世紀末から19世紀のアメリカにおける歴史記述
Project/Area Number |
19720064
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Research Institution | Kochi Women's University |
Principal Investigator |
山口 善成 Kochi Women's University, 文化学部, 准教授 (60364139)
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Keywords | 英米文学 / 文学一般 / アメリカ史 / 歴史記述 / 博物誌 |
Research Abstract |
研究課題である独立直後から19世紀初頭のアメリカにおける国家史の形成について、本年度は当時の歴史記述と「空間認識」との関係から考察を行った。これは昨年度行った歴史と地誌 (geography) の関係に関する分析を発展させたものである。Thomas JeffersonのNotes on the Sate of Virginiaに代表されるように、アメリカ独立期にはアメリカの土地に関するテクストが数多く書かれ、そこでは各地域の自然誌に関する詳細な記述とともに、アメリカという土地の「巨大さ」について触れた箇所が必ずあらわれる。これはCrevecoeurやTocquevnleなど、外国人の手によって著された最初期のアメリカ論についてもあてはまる。アメリカを描くとき、彼らは一様に個々の事例の特殊性にこだわるのと同時に、細かい差異を捨象したアメリカ全体の「広大さ」を指摘している。 この種の詳細な事例へのこだわりと大局的なものの見方の混合は、独立直後から19世紀初期におけるアメリカ歴史記述に方法論上の枠組みを与えていた。本年度はJeremy Belknapの歴史記述、とりわけThe History ofNew-HampshireやThe Forestersを題材に、詳細さと大雑把さが混在するBelknapの方法論を分析した (2008年10月、日本アメリカ文学会全国大会にて口頭発表。現在、学術誌に投稿準備中) 。同じテーマではFrancis Parkman論の続編として、彼の歴史記述を空間認識との関連から論じた考察を学術誌に投稿した (Yostunari Yamaguchi," The Panoramic Point of View and Visual Training for Americans : ' Bird' s-Eye View' Stories of Two Travelers," Review of American Literature 21 (Spring 2009) 校了済み、近刊) 。また、アメリカ独立期のテクストに見られる「詳細さ」と「大雑把さ」についてより一般的な議論として、「大雑把さと些末さのあいだ-『アメリカの農夫の手紙』におけるアメリカ性の矛盾/矛盾のアメリカ性」 (『高知女子大学文化論叢』第11号、2009年3月) を発表した。 以上のように本年度は主に空間的な「広さ」と歴史記述との関連を分析したが、これに引き続いて「深さ」と歴史記述の関係を扱う予定である。そのとっかかりの議論として、2008年4月、筑波大学アメリカ文学会にて「アメリカのとらえ方-歴史とパノラマとパリンプセスト」と題する口頭発表を行った。これも現在学術誌投稿準備中である。
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Research Products
(6 results)