2010 Fiscal Year Annual Research Report
博物誌から国家史へ:18世紀末から19世紀のアメリカにおける歴史記述
Project/Area Number |
19720064
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Research Institution | Kochi Women's University |
Principal Investigator |
山口 善成 高知女子大学, 文化学部, 准教授 (60364139)
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Keywords | 英米文学 / 文学一般 / アメリカ史 / 歴史記述 / 博物誌 |
Research Abstract |
本研究課題の最終年度にあたる平成22年度は、これまでの研究成果の総括を中心に行った。とりわけ、雑誌論文として発表した2本は成果の総まとめと、そこから導き出される概論の提示を強く意識している。論文"The Ideas of History, or How Was 'History' Historicized in Nineteenth-Centtury Western Thought?"は18世紀末から19世紀における西洋社会において、どのように「歴史」「時間性」「変化」といった概念が当時の世界観のパラダイムとなったかを検証したものである。主としてMichel Foucault やArthur O.Lovejoyの知識史をヒントに、個の成立や内面性に対する関心、そして地質学的な時間意識の登場が当時の新しい「歴史性」の誕生を促したことを指摘した。また、論文"The Republic of Letters : Organizing Historical Knowledge in Early National America"は、歴史記述の大前提である史料収集の方法を題材にし、18世紀から19世紀にかけての史料と歴史家のネットワークを分析した。歴史家たちはただ単に必要な史料を互いに交換し合うだけでなく、交換(ないしは複製の配布)による史料の保存を組織化しようとしていた。このような移動や複製を基本とした史料の保存は、耐久性と不動性による保存を第一とした東洋的な書の扱い方と異なる、きわめて西洋的な方法と言うことができる。 口頭発表も論文と同じくここ数年のアメリカ歴史記述に関する研究の成果総括を意図して行った。"Cosmology : A Closing Note"は上掲の"The Republic of Letters"における議論から派生した論考で、特に西洋における「書」や「文字」の扱い方を批判的に検証したものである。また、「歴史の深さ:19世紀アメリカの歴史記述における地質学の想像力」はFrancis Parkman論の総まとめとして、Parkmanの歴史記述における地質学的な特徴を分析、検証した。 本研究課題4年間を含む、アメリカ歴史記述に関する研究成果は一冊の本にまとめ出版する計画で現在総仕上げを行っている。
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Research Products
(5 results)