2009 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ・モデルネの芸術理論・言語理論における子どもの意味―ベンヤミンを手がかりに
Project/Area Number |
19720067
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
岡本 和子 Daito Bunka University, 外国語学部, 講師 (50407649)
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Keywords | ベンヤミン / ブレンターノ / 子ども / 言語 / ドイツ文学 / 芸術理論 / 国際情報機関 / ドイツ |
Research Abstract |
平成21年度の研究成果は次の三点にまとめられる。 1.ベンヤミンの著作における「子ども」と「言語」の関係を表わす事象として、実践と理論の双方にまたがるベンヤミンの子どもの本の蒐集を取り上げた。ベンヤミンの子どもの本の蒐集の重点は、19世紀の手彩色の絵本と文字学習絵本にある。色彩および文字学習に対する関心の根底にあるのは、子どもの言語獲得という問題である(ベンヤミンにとって、色彩とは、子どもが事物の認識し、みずからの音声言語へと変換する際の媒体である)。ベンヤミンによる子どもの本の蒐集とは、子どもがどのように言語を獲得するか、ということを記述しようとする試みである。この意味で、ベンヤミンの子どもの本の蒐集は、幼年時代(言語をもたない状態)の記述の試みの一つと見なすことができる、ということを明らかにした(口頭発表済み、研究発表欄参照)。 2.上記で明らかにしたベンヤミンにおける蒐集の概念を、ベンヤミンの言語理論との連関から分析した。ベンヤミンは、蒐集家に子ども的な相貌と老人的な相貌を見出している。子どもという蒐家は、事物を既存の魔術的連関から解き放ち、事物の言語を人間の言語へと置き換えるのに対して、老人的という蒐集家は、この蒐集した事物をカタログ化する、すなわち、文字体系として構築し、ここに魔術的な体系を作り出す。この言語体系は、蒐集という行為によって変化してゆく、ダイナミックなものであるということを明らかにした(口頭発表済み、研究発表欄参照)。 3.2月にドイツのベルリン国立図書館およびシュトゥットガルトの州立図書館を訪問し、主として19世紀の子どもの本に関する資料を収集した。ここで収集した資料は、現在進めているブレンターノ・アルニムの『少年の魔法の角笛』の末尾に付された「子どもの歌」における、文字学習というテーマについての研究に使用している。
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