2009 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ中学高校教科書におけるマーク・トウェイン―その改変と自己検閲の系譜―
Project/Area Number |
19720069
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石原 剛 Waseda University, 教育・総合科学学術院, 准教授 (00368185)
|
Keywords | アメリカ文学 / 文学教育 / マーク・トウェイン / 学校教科書 |
Research Abstract |
収集した教科書資料のうち1910年までに出版された教科書の分析を行った。分析の結果、これまでいずれの研究者も指摘してこなかった数々の事実を突き止めることができた。中でも、1873年という極めて早い段階で、マーク・トウェイン作品の抜粋が米国教科書に採用されていた事実を示すことができたことは重要である。掲載作品は旅行記からの抜粋で、教育現場で極めて早い時期から小説より旅行記の作者としてトウェインが認識されていた事実を明らかにできた。 さらに20世紀初頭までの米国教科書においては、トウェインは主としてユーモア作家として偏向した紹介がなされたことを明らかにした。同時代作家が小説家として紹介される中で、トウェインは「ユーモア」関連の章で繰り返し紹介されることが多く、彼の鋭い社会批評家として側面は無視ないし軽視されていることが明らかになった。 特に、米国における19世紀最大のベストセラー教科書『マガフィー読本』においてトウェインが徹底して軽視されていることは注目に値する。トウェイン作品を紹介した例は、わずか1回、高校生用の『マガフィー読本』(1889年)が掲載した初期旅行記の抜粋のみで、最高傑作と多くが認める『ハック・フィン』に対しては最低の評価を下して言及している。『ハック・フィン』評価の浮沈は多くの研究者に指摘されてきたが、出版当初から教科書においても『ハック・フィン』評価が困難に直面していたことを示すことができた。 これらの事実を同時代米国のトウェイン観や文学観と有機的に関連付けて分析した成果を、2009年8月に実施された米国ニューヨーク州で開催された第6回国際マーク・トウェイン学会、および同年9月に実施された日本児童文学学会例会で発表した。また、英語論文としても2010年3月刊行の学術誌『早稲田教有評論』に発表した。
|