2009 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀末ジャーナリズムにおけるテロリズム表象と初期モダニズム小説における影響
Project/Area Number |
19720071
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
伊藤 正範 Kwansei Gakuin University, 商学部, 准教授 (10322976)
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Keywords | ジャーナリズム / テロリズム / モダニズム / ジョーゼフ・コンラッド / H.G.ウェルズ |
Research Abstract |
研究最終年の本年度は、一昨年度、昨年度にわたって収集した一次資料の調査結果をもとに、昨年度に引き続き小説テクストの分析・理論化を実施し、結果公表のための論文執筆を行った。 昨年度からの継続課題である、Conrad,The Secret Agentのグリニッジ天文台爆破テロの表象におけるジャーナリズムの言語と伝統的な小説の言語との関わり合いについての考察は、今年度論文化を完了し、"Newspapers in Pockets : Journalism and the Language of Fiction in The Secret Agent"として査読誌に発表した。 今年度はそれに加え、19世紀末のジャーナリズムや文学テクストに現れるテロリスト表象と外国人嫌悪症との関連に注目し、その影響をConradの自伝における外国人としての自己描写に見出す試みを行った。これまでConradのポーランド出自とその作品主題の形成との関連を見出す試みは多くなされてきたものの、当時の外国人嫌悪症がConradの語りに及ぼした影響については未だ十分な検証がなされていなかった。初期モダニズムの言語研究に新たな光を投じるという意味において、本研究の意義は大きい。成果は「ドラキュラとコンラッド-19世紀末イギリスにおけるゼノフォビアと東欧人の自伝的語りについて」として発表した。 また、昨年度着手したConrad, The Nigger of the "Narcissus"とWells, The Invisible Manのテロリスト表象についての研究 (「『見えない』テロリスト、『見える』テロリスト-The Invisible ManとThe Nigger of the "Narcissus"における退化者の可視性」として今年度査読誌に発表) からの発展的課題として、19世紀末のジャーナリズムや大衆文学において散見された社会主義者の犯罪者化 (criminalization) とConradの小説言語との関連を探る研究を行った。これは初期モダニズム小説の政治性と芸術性との複雑な関係を多角的に捉えようとするこれまでにない試みである。研究成果は"A Belaying Pin and a Biscuit : Terrorist Donkin in the Early-Modernist Narrative of The Nigger of the "Narcissus" (仮) として発表予定である。
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Research Products
(3 results)