2007 Fiscal Year Annual Research Report
ビルマ歌謡におけるジャンル形成:18-19世紀の歌謡創作技法の分析を中心として
Project/Area Number |
19720076
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
井上 さゆり Tokyo University of Foreign Studies, 外国語学部, 研究員 (40447503)
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Keywords | ビルマ / 音楽 / 歌謡 / 文学 / ジャンル / 写本 / 貝葉 / 詩 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ビルマ国文学の核である「タチンジー」と総称される古典歌謡におけるジャンル形成過程を明らかにすることである。19年度の作業として実施したのは、第一に、現地における古典歌謡教授方法・芸能コンクールの調査(8-9月)である。この調査において、代表的な楽器である竪琴・サインワイン(打楽器楽団)の教授方法と芸能コンクールの地方予選の模様をビデオで詳細に撮影記録した。本調査の結果、近年、口頭伝承である竪琴演奏法の教授に楽譜が用いられる場合も出てきていること、芸能コンクール参加者の増加及び若年化等が明らかになった。これは、古典歌謡の主要なレパートリーや音階構造の変化を引き起こすことが考えられ、古典歌謡演奏の現在の様態を捉える上で重要な視点となる。また、教師の真似・暗記を繰り返させる教授法がやはり教授における中心的な方法であり、その方法は楽器の形態によって一部異なることも明らかになった。教授法の分析は創作方法の考察にも重要であり、本研究課題の目的であるジャンル形成過程を明らかにするために重要な視点である。この調査の結果を踏まえ、単著『ビルマ古典歌謡の旋律を求めて:書承と口承から創作へ』(風響社)を出版した。さらに、ビルマ古典歌謡のジャンル形成過程について、(1)写本調査、(2)歌詞分析、(3)音楽理論分析の3点からの研究成果を、『アジア・アフリカ言語文化研究』及び東南アジア学会、東洋音楽学会の学会誌に投稿論文として投稿し、いずれも受理された。
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