2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720080
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Research Institution | Hokkaido Institute of Technology |
Principal Investigator |
梶谷 崇 Hokkaido Institute of Technology, 未来デザイン学部, 准教授 (10405657)
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Keywords | 柳宗悦 / 韓国 / 国際情報交換 / 廃墟派 / 3・1運動 / 朝鮮人留学生 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き1920年代の柳宗悦と朝鮮人知識人との関連を裏付ける資料および朝鮮人知識人たちの当時の文化的時代状況に対する考え方が示されている記事資料などの収集活動を韓国および日本国内で行い、整理・分析・総括を行った。 9月には韓国に出張し、国立中央図書館において資料収集を行った。主な収集資料は、 (1) 柳の朝鮮での活動を実質的に支えた東亜日報や廃墟派の人々、特に廉想渉、南宮壁、下榮魯、関泰〓や呉相淳などの当時の状況を示す伝記的な資料、 (2) 留学生として日本国内で柳にかかわった白南薫、崔承萬などの自伝資料、 (3) 当時の朝鮮人留学生たちの状況について書き残している金乙漢などによる資料である。またこの調査に引き続き日本国内においても (4) 朝鮮人留学生に関する日本側の新聞・雑誌記事資料や、 (5) 在日本朝鮮人留学生たちの学友会誌である『学之光』などの朝鮮側の記事資料を国会図書館等を通して収集した。これらの資料は3・1運動後の朝鮮人青年知識人たちの文化や芸術に対する心理的状況やそれと社会や政治との葛藤をよく伝えている。特に留学生たちは2・8運動に当事者としてかかわっていたが、彼らは、日本に対する不信感や拒絶感が絶頂に達している中で柳宗悦という日本人を例外的に受け入れ、評価し、そして協力もしている。20年代の日本人と朝鮮人の関係や、朝鮮人青年知識人層の複雑な心理的状況、および柳宗悦の活動の特異性を理解する上で、以上の資料は非常に重要なものである。また白南薫、崔承萬らが在日本朝鮮YMCAの幹部であったことも特徴的である。柳の活動が多くの場合YMCAやキリスト教関係の施設で行われていたことを、あわせて考えるならば、従来の東亜日報や廃墟派との関係性に加えてYMCAとの関わりの重要性も見逃すことができない。これらは今後ともより明らかにされるべき問題点である。
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