2010 Fiscal Year Annual Research Report
植民地朝鮮における近代児童文学の成立と日本児童文学の交渉
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19720084
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Research Institution | Tokyo Junshin Women's College |
Principal Investigator |
大竹 聖美 東京純心女子大学, 現代文化学部・こども文化学科, 教授 (60386795)
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Keywords | 児童文学 / 児童文化 / 朝鮮 / 植民地 / 近代 / 韓国 / 童謡 / 児童雑誌 |
Research Abstract |
研究期間の最終年度において、研究成果の一端を中国、台湾、韓国、マレーシアなどからの研究者が集まる「アジア児童文学大会」で発表(2010年10月17日)できたことは、海外(特に東アジア)の研究者に研究を知ってもらい、学術的な交流を促進させる上で有意義であった。 また、これまでの主たる発表の場であった日本と韓国の児童文学学会に限らず、日本植民地教育史研究会における「植民地と児童文化」をテーマとした研究大会にて発表の機会を得られたことも大きな収穫であった。本研究者は、植民地における児童文化・文学に関して、特に朝鮮を研究しているが、同時期の台湾や満州の状況も常に関心を寄せている。そのため、同時期の台湾・満州の状況の一端に触れ、情報交換および討議できたことは研究の前進につながった。 本研究テーマによる研究期間を終えるにあたっては、単行本の研究書として『植民地朝鮮と児童文化』(社会評論社)をまとめることができたことが最大の成果で、この分野の稀少な研究書として一里塚となったと考える。本書を通して、現代韓国の児童文学の発展の萌芽が近代にあったことを理解し、植民地朝鮮の児童文化研究の重要性を認識することができるだろう。 日本児童文学との交渉関係としては、朝鮮に渡った日本人による児童文化活動の例として、巌谷小波や沖野岩三郎による朝鮮満州巡回口演童話会について整理し、朝鮮総督府によって編纂された『朝鮮童話集』や朝鮮教育会による課外図書の「普通学校児童文庫」についてまとめた。特に「普通学校児童文庫」についての調査発表は本研究によって初めて試みられた。日本人が朝鮮人子弟に向けて編纂した日本語と朝鮮語が混在した読み物の本書は、日本の児童文化史においても、韓国の児童文化史においても、これまで言及されることのなかった独特の文庫である。植民地朝鮮の児童文化の代表的なものとして記録しておきたい。
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