2009 Fiscal Year Annual Research Report
ロシア語名詞アクセントの動態と借用語の影響に関する研究
Project/Area Number |
19720094
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
安藤 智子 University of Toyama, 人文学部, 准教授 (00345547)
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Keywords | 言語学 / アクセント / ロシア語 / 借用語 / 音韻論 |
Research Abstract |
言語には、通時的変化の過程が共時的現象に表れている場合があるが、このような現象に対する理論的説明の枠組みを構築するには様々な事例を分析していく必要がある。その中で、本年度の研究の目的は具体的には次の点を明らかにすることとした。それは、ロシア語の固有語の名詞におけるストレス位置の決定の仕組みと近年の借用語におけるそれとの比較により、語彙項目ごとのストレスに関する指定とストレス位置の決定のシステムの異同を明らかにし、現代ロシア語における借用語の増大が名詞のアクセント法に及ぼす影響を究明することである。 この目的のため、まず昨年度の科学研究費によるロシア語母語話者に対する無意味語のアクセント調査およびそれ以前の先行研究から、現代ロシア語の名詞においては語幹末がストレス位置のデフォルトであるとの仮説を立て、そのデフォルトの位置と実際の借用語に見られるストレス位置との比較から、借用語のストレスがどのように決定されているかについて調査を行った。その結果、借用語でもこのデフォルトに一致するものが多いことが明らかになったが、それ以外の位置にストレスを持つ語については、原語のストレス位置およびストレスを持ちにくい派生形態素の存在、それにロシア語における複合語アクセントの傾向によって説明できることがわかった。 さらに、上記の借用語と通時的研究から得られた固有語のアクセント法とを比較してみると、まずシステムの比較からはデフォルト位置の変化が挙げられる。そして、語彙項目ごとの指定に関しては、固有語では屈折変化において固定したストレスを示す語幹が有標、ストレスが移動する語の語幹は無標とされたのに対し、現代の借用語では語幹末に固定したストレスは無標、原語の影響などでそれ以外の位置にストレスを持つものやストレスの移動を示すものが有標と考える方が効率的な説明になり、これは固有語にも適用できることがわかった。
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Research Products
(1 results)