2009 Fiscal Year Annual Research Report
発話のメカニズムから見た身振りと発話の協調に関する研究
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19720097
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Research Institution | Kushiro Public University of Economics |
Principal Investigator |
金原 いれいね Kushiro Public University of Economics, 経済学部, 准教授 (80433118)
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Keywords | 身振り / 擬態語、擬音語 / モジュール |
Research Abstract |
「身振りの制限による発語への影響」は、身振りを制限して行ったアニメーションの説明課題による実験から得られた研究成果のまとめである。両手を板に固定することで、発話にどのような変化が生じるかという点について、特に身振りと連動して生起することが多いとされるオノマトペ(擬音語・擬態語)を対象に分析を行った。その結果、身振りの制限の有無にかかわらずオノマトペの頻度は一定であることが明らかになった。また、声の局さや言い淀みの頻度についても同様の結果が得られた。このことは、身振りと発話が一部独立したプロセスのもとに産出されている可能性を示唆している。しかし、両手を固定された場合、手以外の身振りが増加し,それらの身体動作とオノマトペとが同時に現れる確率が高いことがわかった。これは、オノマトペと身振りの結びつきの強さを示すものであり、身振りを手以外の身体部分に現れる自由度の高いモダリティーとして捉えなおす必要性を示している。 次に、発話と身振りの結びつきを対話者の空間の使用という観点から分析するため、対話者が幾何学パズル課題を使って実験を行った。その際、対話者がお互いの身振りを見ることができる低い衝立と、完全に視野を遮る高い衝立を使うことで、コミュニケーションにおける身振りの役割と空間の使用について調査した。その結果、高い衝立がある場合には、身ぶりが伝達機能を失うことから、身振りは机の上の位署で行われることが多かった。一方、低い衝立しかなく、お互いの身振りを参照できる状況では、対話者の身振りが、顔の前面近くで行われる頻度が増加した。意味伝達を補助する手段として身振りが積極的に利用され、視覚的により焦点化された位置が用いられやすくなったといえる。対話者が相互に身振りを参照しつつ、理解しやすい形態を選択することで、発話と身振りを連携させた効率的な意味伝達が行われていると考えられる。
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