2007 Fiscal Year Annual Research Report
子どもの言語獲得における韻律情報の役割-日本語・英語のあいまい文を通して
Project/Area Number |
19720101
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
磯部 美和 Tokyo National University of Fine Arts and Music, 言語・音声トレーニングセンター, 助教 (00449018)
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Keywords | 言語獲得 / 生成文法 |
Research Abstract |
本研究の目的は、(1)言語理論・言語獲得研究における知見をもとに、日本語や英語などを母語とする子どもを対象に、言語機能に関連する性質の獲得過程を検討すること、特に、あいまい文の理解を実証的に調査することにより、言語獲得においで韻律情報が果たす役割を追究すること、それにより、(2)言語機能における統語部門と関係の解明、および言語獲得機構と運用機構の解明を目指すことにある。 本年度における研究成果は以下のとおるである。 1.日本語の照応形「自分」を含むあいまいを用い、ある句が発音される位置と解釈される位置が異なる際に起こる「再構築効果」の獲得について、日本語を母語とする3-4歳児に実験を行い検証した。テスト文は、文頭へのかきまぜを受けた埋める込み節を伴っており、「自分」の先行詞として主節主語と埋め込み主語の2つの可能性を持つ。結果は、3歳から再構築効果に関して大人と同様の知識を持つこと示し、言語機能の初期状態に関する仮説に支持を与えた。 2.主要部内在型関係節と(英語タイプの)関係節の解釈可能性を持つあいまい文を用い、日本語を母語とする3-4歳児の韻律情報の使用について予備実験を行った。子どもがあいまい性の解決のために韻律情報を用い得るかどうかは、現在のところ決定的な結果は得られていない。本予備実験で用いたテスト文の解釈は韻律を手掛かり決定されるが、実験結果は、子どもは大人同様には韻律情報を有効利用しないことを示唆した。この結果が3歳児の理解を正しく反映しているのか、実験上の不備により生じたのか、についてさらに検討し、その上でより大規模な実験の実施が必要であることが判明した。 今後は、本年度残された課題や新たな課題に取り組むことで、言語獲得・理解にどのような新しい事実を提示できるか、また、言語機能に対しどのような証拠が与えられるかを追究する予定である。
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Research Products
(1 results)