2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720105
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮地 朝子 Nagoya University, 文学研究科, 講師 (10335086)
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Keywords | 形式名詞 / 文法化 / とりたて / 助動詞 / ハズ / ホカ / キリ |
Research Abstract |
本研究課題は、現代日本語のとりたて助詞(ダケ・ホド…)、助動詞(ハズ(ダ)・モノ(ダ)…)に見られる形式名詞類の機能語への幅広い参与-形式名詞に関わる文法化-を扱う。形式名詞や日本語の構造のいかなる側面がこの変化をもたらしたのか、形式名詞がいかに「名詞」の範疇を脱しあるいは脱せずに現代語での文法機能を獲得するのか。名詞の性質と連体構造の相互関係、存在文・非存在文、コピュラ文の構造的関連性に加え、否定・数量詞のスコープの広狭にかかわる再分析・類推の作用、言語外的条件・語用論的条件の統合的に理論による説明を目指す。 初年度の成果として、まずは特に相対名詞の性質について未解明の点が多いことを本研究の問題意識の前提として確認し、名詞研究の重要性を改めて示した(青木博史編論集掲載論文)。先行の研究課題(若手研究(B)16720105)を引き継ぎ本研究の仮説を支える成果として、「ハズ(ダ)」の形式化・文法化、「デス・マス」の諸用法発現に関する論考が公刊された。「筈ハズ」の文法化には、連体修飾節の個別具体から抽象一般への拡張が関与しており、その拡張は否定文や条件節といった環境や「指示詞+形式名詞」句の指示性の幅(曖昧性)がその原動力といえる(名古屋大学文学研究科シンポジウム報告書)。「デス・マス」の諸用法の発現のメカニズムは、発話場面(対話か文章か)や聞き手の条件(特定/不特定・個別/多数)等の語用論的条件に加え、その条件を制限としつつ行われる話者の操作性によって説明できる(「自然言語処理」掲載論文)。ハズから得た仮説はホカの文法化現象に援用可能であり(日本言語学会ワークショップ)、「デス・マス」の共時的な諸用法発現を説明する枠組みは、歴史的な機能変化をも説明するものと考えられる。次年度以降、この観点を他の形式名詞類(キリ・カギリ・ホド…)に援用しながら理論的枠組みを検証していく。
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