2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720105
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮地 朝子 Nagoya University, 文学研究科, 准教授 (10335086)
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Keywords | 形式名詞 / 文法化 / とりたて / 非存在文 / 助詞 / ホカ |
Research Abstract |
今年度は、助詞化した形式名詞類を中心にデータの収集整理を進めるとともに、どのような構文環境が、いかに語用論的プロセスと関わりを持ちつつ文法化の推進力・抑制力となりうるか、その可能性について考察を行った。ホカについては、非存在文付加句としての環境から形式化を果たし、その後、累加・列挙用法を分化させたプロセスを、名詞として範囲「外」の全要素・個別の要素のいずれをも指しうる性質と、その性質に起因する非存在文との親和性のもとに提示した(第1回日本語文法史研究会)。カギリ・ダケ等についても、名詞句個々のもつ指示の特性が名詞の形式化・用法の多様化に関わると言える。また「指示詞+形式名詞」、非存在文という環境を、多くの形式名詞の文法化を促進する言語内的条件として指摘できる見込みである。ただし文法化の説明としては抑制力となる制約を見いだすことも重要な検討課題であり考察中である。語用論的プロセスと文法化現象の関わりについては、関連の深い研究課題を擁する科学研究費補助金※によるワークショップで発表し、活発な議論、意見交換の機会を得た。言語形式の諸用法発現を説明する枠組みは、歴史的な機能変化をも説明しうるという立場から、モダリティ形式の文法化を、発話場面の話し手・聞き手条件といったミクロの語用論的条件との関わりの中で捉える試みを提示するとともに、社会や文化と結びついたマクロの条件との関係を整理していくことの重要性を確認した。研究計画の後半となる次年度以降は、成果発表を中心に行い理論的枠組みを検証する材料を可能な限り提示する。 ※平成20年度科学研究費補助金【基盤(C)一般】研究代表者 : 滝浦真人「<距離>を軸としたモダリティーとポライトネスの包括的語用論」課題番号20520362
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