2008 Fiscal Year Annual Research Report
英語史における動詞屈折接辞衰退の統語的影響に関する研究
Project/Area Number |
19720113
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
縄田 裕幸 Shimane University, 教育学部, 准教授 (00325036)
|
Keywords | 英語史 / 統語論 / 生成文法 / 言語変化 / 形態論 / 動詞第二位現象 / 統語地図作製 / 豊かな一致の仮説 |
Research Abstract |
今年度は, 英語史における動詞第二位(V2)現象の消失と動詞屈折接辞の衰退の相関関係について研究をすすめ, その成果を研究発表欄に記載した論文"Clausal Architecture and Inflectional paradigm : The Case of V2 in the History of English"としてまとめた。この論文は, 動詞屈折の豊かさが顕在的動詞移動の有無に影響を与えるという「豊かな一致の仮説」が, 従来から指摘されてきたV-to-T移動ばかりでなくV2移動にも当てはまることを実証的・理論的に解明したものである。研究の概要は以下の通りである。まず, V2語順の存否と動詞の複数一致形態素の有無の間に相関関係があることを, 中英語テキストの文献調査により実証的に明らかにした。次にこの事実を, 生成文法理論の枠組み, とりわけ細分化されたCP節構造と, 分散形態論による動詞屈折接辞派生の仕組みにより説明することを試みた。いわゆるV2移動には動詞がFoc位置まで移動するタイプとFin位置まで移動するタイプの2種類があることを指摘し, 後者のみが動詞屈折接辞衰退の影響を受けたことを論じた。また, 動詞の一致に関わる素性のうち人称素性がFinに, 数素性がTopにそれぞれ担われていたと仮定することにより, 複数一致形態素が衰退するとともに動詞がFin位置まで上昇しなくなり, その結果V2語順が消失したと主張した。さらに, 提案された分析により, 「豊かな一致の仮説」をV2移動に適用する際の障害となってきた諸現象(現代英語における残余的V2現象, 従属節におけるV2の不在, 動詞が一致形態素を持たない大陸スカンジナビア諸語におけるV2の存在)に対しても, 自然な説明が与えられることを示した。なお当該の論文は日本英語学会の第6回(2008年度)新人賞において研究奨励賞を受賞し, 学会で高い評価を得た。
|
Research Products
(1 results)