2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720115
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
長野 明子 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 助教 (90407883)
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Keywords | 英語学 / 語形成 / 複合動詞 / 屈折 / コーパス調査 / 語彙化 / 句動詞 |
Research Abstract |
複合動詞となりうる範疇の理論的組み合わせは、N+V, A+V, P+V, V+V, V+N, V+A, V+Pであゆ、このうちのV+Nを除く全ての型が英語の語として存在する。そこで、昨年度に調査したN+V, A+V, V+V型の複合動詞に加え、P+V(P=Particle), V+A, V+P型の複合動詞に関しても文献調査とコーパス調査を進めた。結論として、主に屈折と意味に関する事実から、これらの型のいずれも、真の複合語といえないと判明した。まず、N+V, A+V型の動詞は、対応する複合名詞、複合形容詞から逆形成か転換で派生される。この分析は、動詞の屈折に関する事実(全体の屈折が右側動詞の屈折に必ずしも一致せず、右側動詞が不規則動詞でも全体としては規則活用したり、活用が揺れたりする事実)と意味に関する事実(動詞の意味に対応する複合名詞、形容詞の意味が包含されている事実)から支持される。次に、P+V型の動詞は、屈折の揺れ、生産性の低さから、直接複合ではなく、対応するV+P型の句動詞からの倒置によって派生すべきである。また、V+V型の動詞については、定形屈折への強い抵抗、二つの動詞が同時展開する事象を表すという意味特性から、並列複合語の一種と考えることができる。さらに、V+A型の動詞については、意味の透明度、生産性の程度、屈折接辞や派生接辞のつき方等から、結果構文からの語彙化によってできたものと、V+P型の句動詞に属するものの二種類から成ることを実証した。これらの結果をまとめると、英語では構成要素の範疇に関わらず動詞複合は不可能であり、「複合動詞」のように見える形式は、真の複合語ではなく、何らかの他の文法形式からの派生形である、と一般化することができる。
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