2008 Fiscal Year Annual Research Report
英語前置詞学習における空間イメージを利用したウェブ・ラーニングシステムの開発
Project/Area Number |
19720134
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
佐藤 健 Tokyo University of Agriculture and Technology, 大学院・共生科学技術研究院, 講師 (40402242)
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Keywords | 空間前置詞 / 多義語 / イメージ・スキーマ / 語義間ネットワーク / 注釈 / 語義の和訳 / イメージ表示 / 辞書 |
Research Abstract |
平成20年度は、前年度に学会参加や資料収集によって得た知見を元に、ウェブ・ラーニングに適した空間イメージのあり方を実証的に研究し、それを踏まえてコンピュータメディアの特性を生かした空間イメージを作成するところまで到達したという点において、研究はほぼ計画書通りに進行できていると言うことが出来る。 具体的には、前置詞の語義説明における注釈としての空間概念イメージの表示は、学習者の空間概念理解を命題的なものから各状況の心的表象を可能し、その結果状況ごとの適切な語義選択を可能にする働きがあることを、実験を通して検証することができた。 ところが、空間イメージを語義の説明の補足ではなく。各例文の説明として訳語の代わりとして具体的な状況を表すものとして提示すると、従来の語義と例文の和訳を掲載している辞書と比べても前置詞理解に有意な差を見いだすことが出来なかった。即ちこのことは、イメージ表示の役割は、語義の適切な理解を阻害されるとされる語義あるいはその例文の和訳の代用としてではなく、言語的説明の補助としてイメージ表示を用いることによって語義理解を促進することを示している。 これらの検証は、ニューメディアを利用した外国語教材作成を適応すれば、イメージは各語義を包括的に説明するような「概念イメージ」として、従来の前置詞の語義とそれに従った例文の補足として提示することの必要性を示唆していると言える。この考察は、国際学会で発表することが出来た。 次に、空間概念的イメージの提示の必要性を立証することが出来たので、どのようなイメージを提示することが学習者の多義語としての前置詞の語義理解を促進し、適切な語・語義使用につながるのかを検証するために、3種類の空間イメージを伴った前置詞学習システムを開発した。1つは紙媒体の辞書と同様に、平面的な空間イメージ、次は動作を伴う平面的な空間イメージ、そして最後に動作を伴う立体的な空間イメージを作成した。これは空間概念イメージは本来、人間が現実に知覚する空間概念の集積によって抽象化されたものであるとするならば、知覚した状況に近い立体的な空間イメージの方が各語義の空間概念をより適切に理解し、それが語義理解とその適切な使用に繋がるという仮説に基づいている。 そこで最終年度である21年度は、空間イメージの形態に関する検証に焦点を当て、その結果として作成した前置詞学習システムをウェブ上に公開し、学習者が利用できる状況にすることを目的として進めていく予定である。なお、上述の前置詞学習における空間イメージの形態についての研究結果は、すでに国内の全国大会と国際学会にて発表することが既に決定している。
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Research Products
(2 results)