Research Abstract |
研究目的 英語習得における英語語彙力の重要性は広く認識されているが,「語彙力とは何か」という問いにはいまだ明確な回答が存在しない。本研究では,語彙力の構成要因を,意味理解力・音韻理解力・統語理解力の3つととらえ,それぞれの能力の相互の関係性を明らかにすることをめざす。具体的には,学習<処理<アウトプットという各局面における3能力の位置づけを,1)学習スタイルアンケート,2)言語実験,3)語彙テスト実験を通して明らかにする。あわせて,学習者の言語産出データを収集し,これらにより,日本人学習者に特化した語彙学習システムの基本デザインの開発を行う。 研究成果 研究の最終年度にあたる本年度においては,(1)英語学習者コーパスCEEAUSの構築と公開,(2)英語処理時と日本語処理時の反応速度・脳賦活調査,(3)英語→日本語翻訳および日本語→英語翻訳時の反応速度および脳賦活の調査を行った。(1)については成果を論文で方向した他,オンラインでの無償公開を実現した。(2),(3)については実験データの分析を行い,成果を研究論文として発表した。 研究の意義 言語産出に基づくコーパス言語学的なアプローチと心理実験のアプローチを組み合わせ,従来,教育現場であまり重視されていなかった音韻理解と意味理解の乖離の問題について新たな視点から解明を行おうとした点に本研究の意義がある。また,学習者の様々な態度要困と彼らの言語産出の関係を研究する基礎資料となる学習者コーパスの構築が完了し,公開に至ったことも,言語教育・研究の点で意義があろう。3年間にわたる研究により,日本人英語学習者は,ごく平易な語であっても,その意味理解と音韻理解の間に質的なギャップがあり,それは母語処理時とは根本的に異なることが客観的に示された。この結果は,言語教育,とくに語彙指導における音韻の重要性を改めて示唆するもので,今後の指導においては,語彙の意味と音韻の統合性を高めてゆく方向性が重要になると考えられる。
|