2008 Fiscal Year Annual Research Report
第二言語における統語形態素とレキシコンの解釈・使用にみられる第一言語の影響
Project/Area Number |
19720139
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
奥脇 奈津美 Tsuru University, 文学部, 准教授 (60363884)
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Keywords | 第二言語習得 / 統語形態素 / 第一言語の影響 |
Research Abstract |
今年度の研究では、第二言語習得の際に第一言語がいかに関与しているかを探るため、言語モジュールに関わる言語項目のなかで特に統語形態素の習得に注目し、習熟度別(発達段階、最終段階)に第二言語の発達の実態を調査した。具体的には、日本人英語学習者(上級・中級レベル)によるテンス解釈に注目し、中級レベル話者(大学生の学習者)と上級レベル話者(英語圏に長期滞在経験をもつ学習者)を被験者として文許容度判断テストによる言語実験を行った。テンスの第二言語習得に関して、産出面において得られた「最終段階までにはほぼ母語話者と同様のテンスに関する言語知識が習得可能である」(Okuwaki, 2005)という結果が、解釈面からも支持されるかどうかを調べ、テンスの知識を体系的に考察しようと試みた。結果として、第二言語学習者が、微妙な意味解釈に関する項目を発達過程の早い段階で習得して母語話者と同様の解釈を行うことができることを示したが、正確性をもって形態的に表現できるためにはある程度の言語的発達が必要であるとまとめた。 分野への意義、重要性としては、第二言語学習者が、母語における知識をそのまま転移するのではなく、肯定証拠に基づいて第二言語特有の複雑な文法に気づくことができるという発見、しかし、それを言語形式として正しく産出できるようになるのはその後の発達であるという知見である。これは、今回対象となった項目のみならず、その他の言語項目においても適用されるべき仮定であるという点も意義があると考えられる。 さらに、言語モジュールの中でもより認知能力と関わるレキシコンについて文献研究を進めた。上記の研究で明らかになったことが、他の言語項目にも当てはまるどうかという視点から理論的研究を進めている。 次年度は、今年度の研究の成果を基に、日本人の英語習得という枠を超えて第二言語習得一般に関して考察する予定である。
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