2010 Fiscal Year Annual Research Report
第二言語における統語形態素とレキシコンの解釈・使用にみられる第一言語の影響
Project/Area Number |
19720139
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
奥脇 奈津美 都留文科大学, 文学部, 准教授 (60363884)
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Keywords | 第二言語習得 / 統語形態素 / 第一言語の影響 |
Research Abstract |
今年度の研究では、アスペクトに関する統語形態素に注目し、第二言語文法が発達する過程において第一言語の影響がいかに現れるのかを検証した。アスペクトを含むtemporalityは言語に普遍的に存在すると考えられるが、それをどのように文法化するかは言語によって異なる。本研究は、L1とL2で「意味-形式」の関係が異なる場合に注目し、英語のbe+-ing形がもつさまざまなアスペクト的意味、特に日本語で「~テイル」とは訳せないような場合において、日本人英語学習者がbe+-ing形にどのような意味を付与するのか、文の適切性判断テストを用いて調べた。習熟度による違い(初級・中級レベル)があるのかどうかも見た。結果として、L1とL2で「意味-形式」の関係が異なる場合でも、学習者は習熟度が上がるにつれて母語話者のような解釈に近づいていくということがわかったが、状態動詞のbe+-ing形による「一時的状態」の解釈のような微妙な意味の違いの認識は難しいことも明らかになった。 これまでのアスペクト研究では、形態素の領域は主に発話データに基づいており、形態素を適切に使用できても意味解釈が適切にされているかについてはあまり注目をされてこなかったが、今後は解釈データに基づく意味的な側面にも目を向けて形態素研究を進める必要がある、という本研究の示唆は意義のあるものである。さらに、上記とは別の言語モジュールであると考えられるレキシコンについては、特に第二言語におけるformulaic sequencesについての理論研究を進め、次年度に向けての言語テストを準備した。 次年度は、今年度の研究の成果を基に、中国語やスペイン語が第意義言語である英語学習者からもデータを集め、第二習得における母語の影響をさらに調べていく予定である。
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