2007 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカン・コミックスから読み取る異文化情報学の基盤構築
Project/Area Number |
19720147
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Research Institution | Kyoto University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
藤本 幸治 Kyoto University of Foreign Studies, 外国語学部, 講師 (50310785)
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Keywords | 異文化教育 / 言語文化教育 / 国際研究者交流 / アメリカ |
Research Abstract |
本年度はまず、研究に必要な文献および映像資料の研究分析とアメコミの舞台の多くに使用されるニューヨーク市への渡航と現地調査を行った。 ニューヨーク市での渡航では、特に現地でのコミック愛好家の姿を観察し、インタビューの実施などを目的とし、市内のコミックス専門店での取材に多くの時間をかけた。 そこから観察できた貴重なデータとして挙げられるのは、アメリカのマンガは子供向けであるという私自身が固定観念化していた図式の転覆であった。事実、コミック作家も大人であれば、実はコミック読者もほとんどが成人(男性)であることが如実に観察できた。 では彼らは、コミックスを媒介として何を伝え何を読み取ろうとしているのか。研究当初の目的は、幼少期におけるアメリカ人の宗教観や道徳観の形成、あるいは言語使用、言語運用を媒体とした人格の形成における図画文学としてのコミックスの存在に多くの意識を囚われたが、実際にはそれは誤りであった。 本年度はこのことで、大きく研究の基礎を見直し、「大人にとっての」コミックス学という視点から、特にスーパー・ヒーロー作品を精査し、論文としてまとめた。わずか一年で、20ページ以上に渡る論文を執筆したが、まだこれは本研究のほんの初期段階にしか過ぎない。当初の子供にとっての情報収集媒体としての価値や今回見えてきた成人向けメディアとしての役割とその分析と統合のためには、課された難題は山積している。と同時に、本研究の意義がますます強まったと確信している。次年度も引き続き、更なる研究に邁進したい。
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