Research Abstract |
本研究では,従来の非言語情報の捉え方を再考し,円滑なコミュニケーション活動のメカニズムを解明するために,共同注意joint attention(Tomasello 1999, 2005)という認知行為を手がかりに,英語学習者と英語話者との対話の特徴付けを行う。共同注意とは,二者が注意を向ける物体ないしは事象のことで,互いが共同注意を共有したときに意思疎通が完成するという,社会的・コミュニケーション的な役割を果たしている。つまり,円滑なコミュニケーションには、対話者間の共同注意の共有が不可欠であるといえる。そこで,本研究では,この能力の特質をとらえるために,英語学習者と英語話者間のマルチモーダルな音声対話データベースの構築(5分程度の課題遂行型で話を展開させていくもの),言語情報と非言語情報の対応付けの研究,共同注意のアノテーションの研究を行う。本研究の独創性は,非言語情報を含む英語学習者と英語話者間のマルチモーダルな音声対話データベースを構築する点である。英語学習者のコーパスデータは,コミュニケーションの断絶を多く含むことが予想され,逆に母語での研究にも非常に参考になると考えられる。また,非言語情報の記述方法の開発も重要である。従来のコーパスデータでは,話者が言おうとしたことを想像するしかなかったが,マルチモーダルコーパスデータは,言語情報とともに非言語情報を含んでおり,研究の多様性を促すものになる。とりわけ,ダイナミックな対話のつながりの根底にある共同注意の記述は,どのようなメカニズムがコミュニケーション能力を支えているかを解明する手がかりとなり,十分に研究する意義がある。本年度は,文献・資料の収集・整理,データ収録に当て,データの収録では,マルチモーダル音声対話データのビデオ録画と文字化作業を行っている。
|