2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720155
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉村 貴之 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 産学官連携研究員 (40401434)
|
Keywords | アルメニア / ナショナリズム / 共産主義 / ソ連 / 国際関係 |
Research Abstract |
当初の計画では上半期は1920年代のソヴィエト政権が実施したコレニザーツィア(民族育成)が、ソヴィエト・アルメニア社会において民族エリート層が形成される際にどれだけの影響を与えたかを検討する予定であった。しかし、NIHUプログラム・イスラーム地域研究プロジェクト『中央ユーラシアのイスラームと政治』およびアジア経済研究所2007・2008年度研究会『移住と「帰郷」』との連携を図ることになり、むしろ下半期の研究課題、つまり1920年代以降ソヴィエト・アルメニア政府が国外同胞に働きかけた「祖国帰還」運動について考察する方が急務となったため、上半期の計画は来年度に回し、2008年秋にモスクワのロシア国立社会政治文書館(RGASPI)で調査を行うことから始める。 一方、1920年代以降のソヴィエト・アルメニアへの帰還運動に関しては、在外コミュニティにおいてもともと支配的だった旧オスマン帝国のアルメニア人エリートの役割が大きく、1920年代に彼らが、本来は自分達と無関係だったソヴィエト・アルメニアを自らの故郷として宣伝した。その裏にはソヴィエト・アルメニアから亡命してきた民族政党ダシュナク党との在外コミュニティを巡る覇権闘争があり、その闘争を有利に進めるために旧オスマン・エリートはソヴィエト政権に近づいた。今年度アルメニア国立文書館で調査した結果、1950年代の帰還運動もこの構造は全く変わっていないことが確かめられた。来年度は1920年代と1950年代の帰還運動の比較を行い、特に知識人の描いたソヴィエト・アルメニア観が在外コミュニティにおいてどのように受容されたかについて検討する。
|
Research Products
(8 results)