2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720155
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
吉村 貴之 Tokyo University of Foreign Studies, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (40401434)
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Keywords | アルメニア / ナショナリズム / 共産主義 / ソ連 / 国際関係 |
Research Abstract |
平成20年8月にアルメニアに渡航し、アルメニア国立文書館で1950年代の帰還運動に関する公文書の調査を昨年度に引き続き行った。1920年代と1950年代にソヴィエト・アルメニア政府が国外同胞に働きかけた2つの「祖国帰還」運動を比較し、親ソ的な国外の民族政党「民主自由党」と社会団体「アルメニア慈善協会」が一貫して帰還運動の協力者となっていたことを明らかにした。両団体は、単に在外アルメニア人コミュニティからアルメニア系住民をソヴィエト・アルメニアに送るだけでなく、同国の経済開発に必要な資金をも拠出し、親ソ的な世論を盛り上げるような記事を在外コミュニティ紙に掲載した。しかし、1920年代に比べると1950年代には食料のような生活物資の援助はそれほど多くはないことも分かった。 また、アルメニア国立文書館での調査に引き続き、同年9月にモスクワのロシア国立社会政治文書館(RGASPI)でも調査を行い、1920年代のソヴィエト政権が実施したコレニザーツィア(民族エリート育成)政策が、ソヴィエト・アルメニア社会において民族エリート層が形成される際にどのような影響を与えたかを検討した。アルメニア共産党は、1921年当初はグルジアやアゼルバイジャンとの連邦化によって地域エリートを育成することを志向したが、グルジア共産党の反対で連邦化が有名無実となり、むしろソヴィエト・アルメニア国内の民族主義政党であるダシュナク党の残党の取り込みや国外のアルメニア人を自国に呼び込むことでこれを果たそうとする方策に向かったことが明らかとなった。
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Research Products
(6 results)