2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720155
|
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
吉村 貴之 Tokyo University of Foreign Studies, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (40401434)
|
Keywords | アルメニア / ナショナリズム / 共産主義 / ソ連 / 国際関係 / 中東 / ディアスポラ / エスニシティ |
Research Abstract |
第二次大戦後に始まった在外同胞のソヴィエト・アルメニアへの「帰還」運動は、ソヴィエト政権側が主導して始められたものと認識していたが、文書館史料などを分析すると、戦間期に親ソ派として活動していた在外アルメニア政党氏主自由党なども、1937年以降、いったん中断していた「帰還」事業の再開を所望していたことが明らかとなった。一方、反ソ路線に傾いていた亡命政党ダシュナク党も第二次大戦直後には「帰還」運動に関して必ずしも批判的でなかった点は興味深い。今後検討を要する課題である。 また、アルメニアのソヴィエト政権側は、新聞雑誌メディアにおける在外同胞への帰還呼びかけとして、「民族の故郷」としてのソヴィエト・アルメニアという戦間期に在外親ソ派が強調したナショナリズムの語法を浩用すると同時に、豊かな生活を保障する共産主義という宣伝を行った。第二次大戦の混乱によって経済的困難に陥っていた中東のアルメニア系庶民にとって、このナショナリズムと経済発展という抱き合わせの宣伝は効果的であったものの、「本国帰還」者の中に多くの失業者怠業者を抱え込む副作用も伴った。以後、少数民族の行きすぎたナショナリズムの高揚を警戒するソヴィエト政権にとって、ナショナリズムの宣伝によって呼び寄せた在外同胞の取り込みの問題も政権側にとって懸念材料となる。
|
Research Products
(6 results)