2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720167
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷川 穣 Kyoto University, 文学研究科, 准教授 (10362401)
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Keywords | 近代日本 / 仏教史 / 宗教史 / 社会史 / 僧侶 / 脱教団 / 佐田介石 / 浅野研真 |
Research Abstract |
昨年度行った明治前期仏教史に関する史料収集にひきつづき、今年度は明治中期から昭和戦前期まで対象時期を延ばし、「脱教団的」仏教者の系譜学的検討を行った。とりわけ、1890年代〜1930年代における佐田介石研究の足跡をたどり、介石を顕彰しながら自ら「脱教団的」な行動をとった大谷派僧侶出身の仏教社会学者・浅野研真の史的位置を考察した。その基礎的作業として、浅野の子息である故浅野文雄氏(滋賀県東近江市)が遺した文書群の整理を行い仮目録を完成させ、保存・公開に向けた準備を行った。ただし浅野には、筆名を変えて掲載された新聞での連載記事をはじめ、いまだ把握しきれていない膨大な著作があることが判明し、目録の不備を完全に埋めてゆくには予定以上の労力を要した。この作業の過程で、明治期以来形成されていった教団の近代的特質を探る必要性が再認識され、明治前期から中期にかけての大谷派本山の動向を、その所在地たる京都府の知事・北垣国道や、岩倉具視・松方正義ら政府要人、そして三井銀行との関わりから、とくに財政基盤形成の観点から検討し論文にまとめ公表した(「北垣府政期の東本願寺」)。また、同じく明治前期から中期の仏教の社会的位置を考える予備的考察として、学校教育における修身教科書の内容検討とその流通過程に関わる学会報告も行った(「『国のすがた』のうしろすがた」)。介石同様の「脱教団的」ないし宗派を越えて活動した僧侶たちの手によって、その時期に仏教修身教科書の編纂が行われたが、その流通に際してはさまざまな方法(見本の頒布、中央・地方学務官吏への宣伝など)が必要であったことを確認しえた。
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