2009 Fiscal Year Annual Research Report
長登銅山跡出土木簡を用いた古代官営工房運営システムの解明
Project/Area Number |
19720169
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
竹内 亮 Nara Women's University, 全学共通, 助教 (10403320)
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Keywords | 日本史 / 古代 / 木簡 / 官営工房 / 労役 / 庸米 / 雇役制 |
Research Abstract |
本研究の目的は、長登銅山跡出土木簡の正確な釈文を作成すること、および古代官営工房の運営システムを具体的に明らかにすることである。本年度は、木簡所蔵機関である美祢市に長登銅山文化交流館が開館し、木簡も同館に保管されることとなり調査体制が整ったため、現地出張を行って木簡の実物観察および釈文の検討を行った。また、この出張による調査成果を元に、昨年度までに進めてきた長登銅山跡出土木簡に関する先行研究の批判的検討、公表されている釈文の再検討、および木簡群の性格に関する再検討などの成果も踏まえ、論文を1編執筆した。 この論文では、古代長登銅山における労働力編成の法制的位置づけについて明らかにした。これまでの研究では、長登銅山では労働功賃の財源として庸米が用いられていたことが知られていたが、労働力編成が仕丁制によって行われたのか、あるいは雇役制であるのかが明らかにされていなかった。本論文では、これまで知られていた庸米荷札木簡に加え、特に労働力編成に関わるとみられる帳簿木簡などを新たに見出し、それらの釈文に関する新知見も踏まえて、労働力編成が雇役制によって行われていたことを明らかにした。またこの論文では、古代の官営銅生産(採銅)が雇役制によって行われた理由についても考察した。関連する法制史料を検討すると、雇役制は年単位の国家予算編成を前提として、国家が計画的に労働力の配分を行うための制度であることが明らかになった。本論文では、官営銅山における生産銅が主に銭貨鋳造の原料として用いられたことに着目し、銅生産に関わる労働力の投入を年単位で計画的に行うことにより、銭貨の発行量を国家が自由に調整することを目的として、雇役制が採銅事業に導入されたのではないかと推定した。
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Research Products
(1 results)